NPPV(鼻や口を覆うマスクを使って圧力をかけ、呼吸を補助する機器)は、生存期間の延長や生活の質(QOL)を維持するために、早期からの導入が推奨されています。
- 具体的な目安とタイミング:
- 遅くとも、息切れ、起坐呼吸(横になると息苦しい)、朝の頭痛、日中の眠気といった呼吸障害に関連する症状が認められた時点で開始します。
- 努力肺活量(FVC)が80%未満に低下した時期がひとつの目安となります。
- 日中の呼吸機能が正常(FVC80%以上)であっても、**睡眠時に無呼吸や低換気(夜間の酸素飽和度低下など)**がみられる場合にも導入が検討されます。
- なお、NPPVの導入時期は、胃ろう造設」を検討するタイミングでもあります。NPPV導入後に呼吸不全がさらに進行してからでは、安全な胃ろう造設が難しくなるためです。
球麻痺型の場合、考慮すべきことがあります。
球麻痺型だからといって、必ずしも最初からNPPV(非侵襲的陽圧換気療法・NIV)が推奨されないわけではありません。実際、中等度以下の球麻痺の患者さんや、その後の大規模な研究においては、球麻痺群であってもNPPVによる生存期間の延長効果が示されています。
しかし、球麻痺の症状が重度になったり進行したりすると、NPPVの継続が難しくなるリスクや課題があるのは事実です。具体的には以下のような理由が挙げられます。
- 唾液の誤嚥や気道の閉塞: 進行期には、唾液を誤嚥しやすくなったり、球麻痺に伴って舌の根元が落ち込む「舌根沈下」によって上気道が塞がれたりすることで、NPPVによる有効な換気が行えなくなることがあります。
- 気道分泌物(痰など)の排出困難: 流涎(よだれ)や痰を自力で出すことが難しくなることは、NPPV療法の継続を困難にする大きな要因となります。
- 喉頭軟化症の増悪: 球麻痺群では、NPPVの圧力によって吸気時に喉頭蓋(のどの奥のフタ)が気道の奥に引き込まれてしまう症状(喉頭軟化症)が悪化することがあります。
NPPVで呼吸症状が緩和できなくなった場合の対応 進行に伴い、NPPVだけでは呼吸症状が緩和できなくなった場合は、以下のような対応が検討されます。
- 気管切開下人工換気(TIV)への移行: 患者さんが希望される場合は、気管切開を行って人工呼吸器を装着します。気管切開を行うことで、確実な痰の吸引が可能になり、呼吸が楽になります。
- TIVを希望しない場合の緩和ケア: 気管切開を希望されない場合は、排痰補助装置(MI-E)や低圧持続吸引などを活用しつつ、医療用麻薬(オピオイド)や少量の酸素吸入などを用いて呼吸苦を和らげる緩和ケアが行われます。ただし、上気道閉塞や唾液の誤嚥がある状態での緩和ケアは難渋することも少なくありません。
このように、球麻痺型の方でもNPPVを導入して効果を得ることは可能ですが、進行に伴う気道トラブル(唾液の誤嚥や上気道閉塞など)には注意が必要であり、適切なタイミングで設定の見直しや気管切開への移行などを主治医と相談していくことが重要です。
