制度の壁を越える“ピアの力”——再春医療センター「難病サロン」に参加してきました
はじめに
10月7日(第1水曜日)、熊本再春医療センターで開催された「難病サロン」に参加してきました。
今回の参加者は、病院の医療ソーシャルワーカーさん1名、患者・家族は4名。実は、患者・家族側の参加者は全員がALS協会熊本県支部の役員でした。
正直なところ、「もっと多くの方に気軽に利用してほしい!」「今こそ、この場が必要とされているのに……」という思いが強く残りました。
「難病サロンって、一体どんな話をしているの?」
「重苦しい雰囲気なんじゃないの?」
そう思われている方も多いかもしれません。今回はプライバシーに配慮しつつ、サロンの実際の雰囲気や、なぜ今サロンへの参加をおすすめしたいのかをお伝えします。
1. 意外? 実は地元トークや雑談から始まります!
難病サロンは本来、個人の療養生活やプライベートな悩みを安心して話せる場であるため、詳しい内容は非公開が原則です。ただ、いつも深刻な話ばかりをしているわけではありません。
この日も、こんな話題で盛り上がりました。
- 「今度、山鹿に『ラ・ムー』ができるらしいね」
- 「ラ・ムーといえば、100円で焼きそばがどっさり入った焼きそばパンがあるよね」
- 「コスモス薬品は税込表示だから、実は地域最安値のことが多い」
- 「熊本市民病院跡地にロピアができる噂があるけれど、南高江の渋滞を見るとあそこも混みそうだね」

「難病と全然関係ない雑談じゃないか!」と思われるかもしれません(笑)。
ですが、これは初対面同士の緊張をほぐす「アイスブレイク」として、とても大切な時間です。肩の力を抜いておしゃべりできる雰囲気があるからこそ、その後の深い相談や情報交換につながっていきます。
2. 制度のリアルな疑問——「手帳と年金」「手当」のお金の話
場の空気が温まったあとは、療養生活に直結する制度や経済的な話題にも触れました。
- 身体障害者手帳と障害年金の関係「身体障害者手帳2級なら、障害厚生年金2級がもらえるの?」という疑問。実は、手帳の等級と年金の等級は審査基準が別物です。手帳が1級でも年金が認められないケースもあれば、その逆もあります。
- 年金の併給(足し算)のルール老齢年金と障害年金は組み合わせによって受け取れる場合がありますが、障害年金と遺族年金は基本的に併給できません。
- 手当の活用在宅療養中であれば「特別障害者手当」などの申請が検討できるのではないか、といった具体的な話も出ました。
こうした制度や経済面の話は、当事者や家族にとって切実な問題です。
3. かつて病棟で自然に生まれていた「ピア(仲間)のつながり」
以前(コロナ禍前)は、神経内科の病棟などでご家族同士が自然と言葉を交わす光景がよく見られました。朝から夕方まで付き添う中で、
「特別障害者手当の手続きをしたよ」
「夜間は重度訪問介護をお願いできるようになって、家族も夜眠れるようになった」
といった貴重な生の情報が、家族同士・患者同士の雑談から自然と共有されていたのです。
患者や家族同士の横のつながり・支え合いを「ピアコミュニケーション」と呼びます。
実際に役立つ福祉サービスや生活の知恵は、このピアコミュニケーションを通じて得られることが多々あります。
しかし、コロナ禍以降の面会制限などにより、病棟で自然に情報交換をする機会は大きく減ってしまいました。
4. なぜ今、サロンが必要なのか? ——「申請主義」と専門職の限界
日本の福祉制度は非常に手厚い一方で、「申請主義(自分から申請しないと使えない)」という大きな壁があります。知らなければ、利用できる制度も受け皿もないままになってしまいます。
本来、そうした制度の案内はケアマネジャーさんやソーシャルワーカーさんの役割でもあります。しかし、専門職の皆さんにも様々な制約があります。
- ケアマネジャーさん:介護保険の専門家であり、その報酬体系も介護保険に基づいています。医療保険制度や障害福祉制度に踏み込んで対応することは、制度上どうしてもシャドーワーク(無償労働)になりがちです。
- ソーシャルワーカーさん:自治体ごとの運用格差という壁があります。ある自治体では認められる給付が、別の自治体では「介護保険優先」を理由に障害福祉サービスの利用を断られるケースがあります。「紹介したのに役所で断られた」というトラブルを避けるため、自治体判断が分かれる制度は積極的に提案しづらい背景もあります。
誰かが怠けているわけではなく、制度の構造的な課題があるのです。
だからこそ、実際に制度を利用してきた当事者・家族のリアルな経験談(ピアコミュニケーション)が不可欠であり、その補い合える場として「難病サロン」が重要な役割を果たします。
5. 話すだけで、少し心が軽くなる
もちろん、制度やお金の話だけではありません。
日々の介護や闘病に追われていると、誰にも悩みを打ち明けられず、孤立して気持ちを抱え込んでしまいがちです。同じ境遇を理解してくれる仲間に「ただ話を聞いてもらう」だけでも、心がふっと軽くなることがあります。
日本ALS協会熊本県支部でも、多くの遺族会員さんが役員としてボランティアで活動されています。
「支え合える仲間がいたからこそ、介護を乗り越えられた」
「今度は自分が支える番になりたい」
そんな温かい思いを持った仲間が、サロンでお待ちしています。
熊本再春医療センター「難病サロン」のご案内
参加費は無料です。事前予約も不要ですので、お気軽にお立ち寄りください。
- 開催日時:毎月 第1水曜日 14:00〜
- 場所:熊本再春医療センター 旧館(管理棟)1階
- 正門を入って右手にある旧館(管理棟)の中央入口からお入りください。入ってすぐ左手の部屋で開催しています。

患者さんご本人、ご家族、援者の方など、どなたでも大歓迎です。
お茶を飲みながら、日頃のちょっとした疑問や気になること、地元の世間話まで、気軽にお話ししてみませんか?ALSの患者・家族さんだけでなく、難病サロンですから、他の難病の皆さんのご参加も心よりお待ちしております。


